No. 01
寺田屋事件——裸で駆け上がる
1866年1月23日深夜。薩長同盟を結んだばかりの龍馬は、伏見の寺田屋に身を隠していた。
お龍は1階の浴室で入浴中だった。窓越しに、捕り方の一団が建物を包囲する気配を察した。
通常なら、まず着物を着てから逃げる。だがお龍は違った。濡れたまま、何も身にまとわず、階段を駆け上がった。裸で、である。
「龍馬さん、捕り方です!」
龍馬は短銃と刀で応戦。数名の捕り方を撃ち、負傷しながらも脱出に成功した。お龍の一瞬の判断がなければ、龍馬は寺田屋で命を落としていた。
この「裸で駆け上がる」逸話は、日本人の集合的記憶に「最も生々しい夫婦愛」として刻まれた。近代の絵画・小説・映画で繰り返し描かれる名シーン。その恥も外聞もない必死さが、時代を超えて人々の心を打ち続ける。
