No. 01
自ら罪を名乗り出た謎
1870年10月、新政府の刑部省に、今井信郎は自ら出頭した。「坂本龍馬を斬ったのは自分だ」。
当時、龍馬暗殺の実行犯は公式には未特定だった。新選組が疑われたり、薩摩派が疑われたりしていたが、確たる実行犯はいなかった。今井の自供は、突然の「決着」をもたらすものだった。
なぜ彼は自ら名乗り出たのか?
**動機1: 武士の誇り** 「自分がやったことは事実。隠さず罰を受ける」という武士の美学。だがこれは後付け的で、自供までの2-3年の沈黙の説明にはならない。
**動機2: 仲間を守るため** 「単独犯」として自供することで、同行者や命令者(佐々木只三郎=既に死亡)の罪を被る。これが最有力の説。
**動機3: 取引** 新政府と何らかの取引があり、自供の代わりに軽い刑と保護を得た。これも説得力はある。
どれも決定的ではない。今井は、生涯この「自ら名乗り出た理由」を明確に語らなかった。
